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研究・調査活動―シンポジウム・ワークショップ

東洋文庫現代中国研究資料室主催・資料研究会・中国研究データベースワークショップ 「中華人民共和国史研究の現状と資料状況に関する研究交流会」

・日時:11月20日(日)16:00~18:00
・会場:(財)東洋文庫新本館7階会議室
・報告者:張済順(華東師範大学/復旦大学)

 本報告ではまず、近年の1950年代中国研究をめぐる情況が紹介され、1949年前後の「連続と断絶」という視点を中心に、日中台米の研究状況の概観が示された。その上で、中国国内の歴史研究における2つの問題点が指摘された。1つは政府の公式な歴史観によって研究に制約があることである。このために中国現代史研究や人民共和国史研究は近代史や明清史研究と比べて遅れを取ってしまった、と報告者は説明する。もう1つの問題は現在のネットワーク社会であり、ネット上に多くの、擬似史学研究とも言うべき論文が現れている。そのため史学と野史の区別も難しく、歴史的知識に乏しい文芸作品も氾濫しているが、大衆はこれを歓迎している有様である。報告者は前者について、政府の公式な歴史観による「一人天下」の状態を打破する必要を述べ、後者についてネットワーク社会においても着実な研究を行い、学術的価値があり、なお且つ大衆に受け入れられる研究を行う必要を提起した。
 その上で報告者は近年の中国研究の傾向について、2つの点を評価した。1つは特に1950年代史研究において、問題関心が基層社会に向けられていることである。この背景には近年における檔案の公開と、従来の上層の人物や政治イデオロギーを中心とする研究への反省があると報告者は説明する。もう1つ評価されたことは、中国現代史研究における多分野交流である。例えば現代中国の社会経済史研究1つを取ってみても、歴史学・政治学・社会学・経済学・環境学や心理学など多分野の論客によって議論がされている。一方で問題点も指摘する。現在の研究の多くは依然として中共の権威をアプリオリなものとして捉え、社会が強大な国家によって飲み込まれてしまったと認識しており、そのような問題意識の下での研究では往々にして地域性が失われてしまっていると指摘する。
 これらの研究状況に鑑み、報告者は史料の収集及び整理・活用の必要性を説明する。その範囲は檔案史料・出版された公式文書・口述史料・民間史料など多岐に渡る。現在多くの大学や研究機関で多種多様な民間史料を収集していることが指摘され、本報告では上海交通大学歴史系・山西大学歴史系・北京大学歴史系・南京大学歴史系・華東師範大学歴史系の例が紹介された。
 その上で、報告の最後に華東師範大学中国当代史研究中心所蔵の地方檔案・民間史料についての紹介が行われ、その内「門家荘大隊工作檔案」など10シリーズについては内容等詳細な説明がなされた。

報告者等紹介
張 済順(ちょう さいじゅん)…
華東師範大学思勉高等研究院教授、復旦大学歴史系教授

文責・
河野正(東京大学大学院博士課程)

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